NPO法人における役員の任期と登記の特殊性①

前回、定款で任期を確定期限で定めている法人における議事録作成上のポイントをお伝えしたところですが、法改正で確定期限でなくなる各種法人が多い中、確定期限の任期を定めることが多いNPO法人を対象として今後の話を進めていきたいと思います。
(NPO法人は、任期が確定期限であることが多いだけではなく、特定非営利活動促進法(NPO法)において、いわゆる役員の「権利義務承継規定」がないことから、その運営を巡っては混迷を極めることもありますが…)

NPO法人の役員の任期と役員の改選時期

NPO法人の役員の任期は、NPO法第24条で「役員の任期は、2年以内において定款で定める期間とする。」とされ、各都道府県のモデル定款では「2年」としているケースがほとんどなので、「役員の任期は、2年とする」と定款で定めている法人が大半です。

役員を選任する機関は、NPO法では定めがないため、理事会で理事を選任するようなケースも見受けられますが、大半は定款で「役員は、社員総会で選任する」というケースですので、役員の改選は通常次のようなタイミングで行われます。

これが、前回の記事で述べた、

② 議事録に記載されている会議の開催日は、任期の出発点にならないことがほとんど。

という問題点です。
役員の任期を6月1日から5月31日までの2年とした場合、任期満了を迎える5月31日の前までに役員を新たに選任する社員総会を開催することになるので、後から議事録を見たところで、改選された役員の任期のスタートがわからないのです。

余談ですが、仮に5月31日までに役員の改選を行わなかった場合はどうなるのでしょうか?
NPO法24条2項では「定款で役員を社員総会で選任することとしている特定非営利活動法人にあっては、定款により、後任の役員が選任されていない場合に限り、同項の規定により定款で定められた任期の末日後最初の社員総会が終結するまでその任期を伸長することができる」とされているため、仮に定款でそのような任期の伸張規定があれば、6月以降に開催される社員総会まで任期が伸びることはあります(任期が伸びた場合、後任の理事は、6月以降の社員総会で選任された理事が就任を承諾した時から2年なので、5月31日付をもって一度辞任しない限り、今まで通り「6月1日~5月31日」という風に任期の管理ができない弊害はあると思われます。)。

そのような伸張規定がない法人では、NPO法では会社法346条のような役員の権利義務承継規定がないため、原則として任期が満了した役員は社員総会を開催することができません
そこで、NPO法17条の3に基づいて所轄庁に仮理事の選任を請求し、選任された仮理事が社員総会の開催をし、新たな役員を選任することになります。

会社法第346条(役員等に欠員を生じた場合の措置)

  1. 役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する

なお、モデル定款などで見受けられる「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまで、その職務を行わなければならない」という規定が定められていることがありますが、NPO法において、そもそも権利義務承継規定が法定されていないため、この規定をもって仮理事の選任を不要とする運用はされていません。
(ただし、仮理事の選任を待つことができない急迫の事情があれば、仮理事を選任することなく社員総会を開催することが認められる場合があり、その場合は、議事録にはその旨を記載する必要があります。平成19年1月11日法務省民商第30号民事局長回答)

役員の任期の出発点

では、2年の任期の出発点は、どこになるのでしょうか?

NPO法人の場合、会社法における取締役のように「選任後2年以内に~」というような形で、出発点を明らかにする法律上の規定はありませんので、任期の出発点は「就任時ということになります。
すなわち、社員総会などで理事に選任され、その方が理事になることを承諾したタイミングから任期がスタートするのが原則となります。

しかし、NPO法人のような確定任期の法人の場合、少々ややこしいことが生じます。

前回の記事でご紹介した議事録例の抜粋ですが、この例では、5月31日に理事の任期が満了しますので、通常、この社員総会は、5月31日を迎える前に開催されるはずです。
その場合、新しく選任された理事は、議事録に「被選任者は、いずれもその就任を承諾した」とあるように、会議の席上で就任を承諾していますので、就任時を任期の出発点であるとすれば、この会議の時点が任期の出発点になるかのようにも思えますが、今回は、5月31日に任期満了退任する理事の後任として理事を選任したことが、議事録上読み取れるので、新しく選任された理事は「6月1日からの就任を承諾した」という風に解釈することが自然でしょう。

しかし、法人の内部で担当されていた方が辞めてしまい、新しい担当の方が任期の出発点を総会の時点と誤解されている場合をお見受けすることがあります。

そのような場合にも問題なく対応できるように、任期の出発点を、誰が、いつ見ても、ハッキリわかるようにするため、新しく選任された役員の任期がいつからいつまでなのかを議事録に書いておく方がよいと思われます。

これが前回の記事で議事録作成のポイント②としてご紹介した

② 議事録には、新たに選任される役員の任期がいつからいつまでなのかを明記しておく。

という点です。

2年の期間計算

次に、2年の期間をどのように計算するのでしょうか?

実は、これが確定任期の法人にとって一番むずかしい点であり、問題が生じる点であると考えられます。期間の計算は、民法138条~143条に従って計算されることになりますので、定款で「2年」と決まっていたら、キッチリと2年ということになります。

まず、上記議事録のように改選がスムーズに行われていれば、問題になることは少ないです。

つまり、「任期満了前に改選の議事が決議され、新たな任期がスタートする前に新任者から就任承諾を得られている場合」です。


この場合、あらかじめ就任を承諾しているので、6月1日の午前0時から任期がスタートし、民法140条ただし書により初日である6月1日を参入することになります。
そのため、任期は「令和7年6月1日から令和9年5月31日まで」の2年間ということになります。
一番スッキリするパターンですね。

では、仮に上記議事録のケースで、

新しく選任された理事が会議を欠席したり、会議の席上で就任承諾をせず、「6月1日になってからでないと就任は承諾しない」と仰って、6月1日に法人の営業時間(9時~17時)中に事務局を訪れて、就任承諾書を作成・提出された場合はどうなるでしょうか?

この場合は、6月1日の午前0時から任期がスタートしませんので、民法140条本文により初日不算入となります。
その結果、6月1日の就任承諾時点から役員としての任期はスタートしますが、2年の期間を計算する起算点は6月2日からスタートすることになります。
すなわち、この方の任期は「令和7年6月1日から令和9年6月1日まで」の2年間となってしまい、あらかじめ就任を承諾していた理事と任期がズレることになってしまうのです。

まとめますと、

理事への就任の効力が、午前0時からスタートするか?

という点が2年の期間計算をするうえでのポイントになってきます。
これがNPO法人を始め、役員の任期が確定任期で定められた法人において役員の任期を管理することの難しさと言えるでしょう。

ここまで、役員の任期について具体的に書いてきましたので、次回は、NPO法人における理事の登記の特殊性について書いていきたいと思います。

(つづく)